東京地方裁判所 平成7年(ワ)8390号 判決
原告 小田隆
原告 小田良則
原告 小田行男
右三名訴訟代理人弁護士 中島敬行
同 関次郎
被告 慶應義塾
右代表者理事 鳥居泰彦
右訴訟代理人弁護士 藤堂裕
同 寺上泰照
同 松岡浩
同 鹿野元
同 梶谷與平
同 宮城朗
右藤堂訴訟復代理人弁護士 宮川裕光
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告小田隆に対し、五二〇五万一五〇〇円、原告小田良則に対し、一九七一万五七五〇円、原告小田行男に対し一九七一万五七五〇円及び右各金員に対する平成六年八月七日から支払済までそれぞれ年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、糖尿病等の治療で被告の開設する病院に入通院していた患者が左大腿部の蜂窩織炎等に起因する敗血症等によって死亡したことに関し、同患者の相続人である原告らが、同患者の死亡は、同病院の医師らに直腸瘻孔に対する治療法の選択の過誤及び感染症診断の過誤等があったためであるとして、被告に対し、診療契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案である。
一 前提事実(当事者間に争いがない。)
1 小田ゆき(以下「ゆき」という。)は、昭和一〇年一月二日生まれの女性で、平成六年八月七日に死亡した。
原告小田隆(以下「原告隆」という。)は、ゆきの死亡当時、ゆきの夫であったものであり、原告小田良則(以下「原告良則」という。)及び原告小田行男(以下「原告行男」という。)は、いずれもゆきと原告隆との間の子である。
被告は、東京都新宿区信濃町三五番地に慶應義塾大学病院(以下「被告病院」という。)を開設している学校法人である。
2 ゆきは、平成六年四月ころ(以下、平成六年については、年の記載を省略することがある。)から、被告病院の内科において、小沢ゆか子医師(以下「小沢医師」という。)による尿路感染症の治療を受けていたが、五月一八日、被告との間で診療契約を結び、被告病院の内科に入院した。
3 ゆきは、五月二七日、バリウム注腸検査を受け、その結果、S状結腸の壁の狭窄像及び瘻孔が発見された。そのため、ゆきは、六月一〇日、精密検査として、大腸鏡検査を受診した。右検査では、直腸の右後壁部に白苔を伴う不整陥没と瘻孔の存在が確認され、ゆきの肛門痛及び肛門に何か挟まったというような臀部の違和感は、右瘻孔に起因するものと診断された。
4 ゆきは、六月一二日、被告病院を退院した。
5 ゆきは、六月二七日、被告病院の内科外来を受診し、同月二八日、一般外科外来の寺本龍生医師(以下「寺本医師」という。)の診察を受けた。寺本医師は、直腸診を行い、更に簡易直腸鏡検査を施行した。その結果、ゆきの直腸前壁に潰瘍が認められたが、瘻孔は不明瞭であると診断された。
6 ゆきは、七月二五日、被告病院において内科外来を受診した。
7 ゆきは、八月六日、左下肢の腫脹と疼痛のため、被告病院救急外来を受診し、同日午後三時一五分ころ、内科に緊急入院したが、翌七日午後三時一一分、左大腿部の蜂窩織炎等に起因する敗血症等によって死亡した。
二 争点
1 人工肛門造設術等の外科的措置をすべき注意義務違反
(原告らの主張)
(一) ゆきの直腸瘻孔の原因は、必ずしも明らかではないが、仮にこれが、ゆきが従前受けた放射線治療の晩期障害によるものであったとすれば、放射線直腸炎による瘻孔は難治性であり、自然治癒する見込みはほとんどなかった。したがって、ゆきに対しては、経過観察などせずに直ちに人工肛門造設術などの外科的措置をすべきであった。
(二) ゆきの直腸瘻孔が放射線直腸炎によるものでなく、難治性のものでなかったとすれば、瘻孔部の縫合閉鎖の外科的手術が可能であり、直ちに手術を行うべきであった。
(三) 特に、ゆきは糖尿病に罹患しており、直腸瘻孔に起因する感染症にかかりやすく、いったん感染した場合は、重症化するおそれがあったのであるから、直腸瘻孔の原因が何であるかにかかわらず、早急に右外科的措置をして、その危険を除去すべきであった。
ところが、被告病院の医師らは、右のような外科的措置をせずに、漫然とゆきの直腸瘻孔を放置し、その結果ゆきは、左下肢の蜂窩織炎に感染し、敗血症となって死亡した。
(被告の主張)
(一) ゆきの直腸瘻孔が放射線直腸炎によるものであって自然治癒の可能性が乏しかったとしても、根治手段として人工肛門造設等の外科的措置をするか否かについては、直面している危険の内容と程度、人工肛門造設という外科的措置の危険性の程度、人工肛門造設の結果として生ずる日常生活の障害の程度等様々な要因を総合的に判断して決する必要がある。
ゆきの場合においては、平成六年六月二七日、同月二八日及び同年七月二五日の来院時の状態に緊急の外科的措置を要する兆候は見られなかったことから、侵襲が大きく、事後の日常生活に大きな障害を来す人工肛門造設等の外科的治療措置をする必要がなかった。
(二) ゆきの直腸瘻孔が放射線直腸炎によるものでなかったとしても、ゆきの瘻孔が潰瘍性のものであることは明らかであり、しかも、ゆきは、子宮癌摘出後の再発防止措置として子宮周囲の組織に対し放射線照射を受けているのであるから、右組織の創傷治癒機転は極めて不良になっており、かかる瘻孔に対して縫合による閉鎖を施行することは、医学的には無意味である。このような場合の治療方法としては、一時的に人工肛門を造設して潰瘍・瘻孔部を空置し、その後の状況によっては、潰瘍・瘻孔部を切除して永久的な人工肛門の造設をすることが考えられるが、ゆきの場合、人工肛門造設を行うに当たっては、(一)で述べたような事情があり、やはり、直ちに人工肛門造設を行う必要はなかった。
(三) 以上のとおり、被告病院の医師らには、ゆきに対し、人工肛門造設等の外科的措置をすべき義務はなかった。
2 感染症の診断過誤
(原告らの主張)
(一) ゆきは遅くとも平成六年六月中旬ころには直腸瘻孔、穿通性直腸潰瘍に起因する小骨盤腔化膿性死腔炎及び左下肢の蜂窩織炎に罹患していた。
(二) ゆきは、糖尿病に罹患して、一般に感染症にかかりやすくなっており、かつ、直腸瘻孔あるいは穿通性直腸潰瘍を併発したのであるから、直腸及びその周辺組織や臓器の感染症を引き起こす可能性が極めて大きい状態にあった。
そして、ゆきの平成六年六月一一日のCRP値は、一・五四mg/デシリットルと(以下、検査数値については、初回に単位を記載し、以後は単位を省略する。)軽度の炎症を示す異常値であった。また、ゆきは、被告病院の医師に対し、同月二七日及び二八日の受診の際に肛門の違和感、肛門痛を訴えており、同日の外来受診の際には、直腸瘻孔の存在ははっきりしないと診断されているが、かかる場合には瘻孔が閉塞し、その部位が化膿している可能性も十分にあった。ゆきは、七月二五日、小沢医師に対し、自宅近くの医師に坐骨神経痛といわれたこと並びに腰部、臀部及び大腿部等に疼痛があることを訴え、同日の検査でCRP値が七・二〇にまで上昇するなど感染症を示す兆候が現れていた。
(三) 右(二)の状況の下では、医師としては、直腸瘻孔発見後は、壊死性筋膜炎を含め、直腸及びその周辺組織の感染症の危険性をも念頭に置き、問診や触診等を慎重に行い、かつ、CRP値、赤沈値、血清アミロイド値、白血球数などの感染症の有無を判断するのに有用な諸検査を頻回に実施するなどして、ゆきが右感染症に罹患していることを早期に把握し、抗生剤の投与を行うべきであった。また、何らかの異常が認められた場合には、週一回程度の通院を指示するなどして、より厳重な経過観察をすべきであった。
(四) しかし、被告病院の医師らは、平成六年六月二七日の内科外来受診及び同月二八日の外科外来受診の際、ゆきに対して十分な問診を行わず、また、同月一二日までの入院中にゆきが肛門違和感等を訴え、CRP値が軽度ではあるが異常を示していたにもかかわらず、CRP値の検査をしなかった。そのため、被告医師らは、ゆきが直腸瘻孔に起因する感染症に罹患していることを見落とした。
さらに、小沢医師は、平成六年七月二五日の内科外来受診の際、ゆきが自宅近くの医師に坐骨神経痛と診断された旨告げたにもかかわらず、十分な問診、触診等を行わず、また、同日実施したCRP値の測定結果を同日中に利用できるよう手続すべきところそれをしなかったためにCRP値が七・二〇と異常値であることを見逃し、その結果、直腸瘻孔に起因する感染症を見落とし、本来一週間後の来診を指示すべきところ漫然と四週間後の来院を指示したことにより、右感染症に対する有効な治療をする機会を失わせた。
(被告の主張)
(一) ゆきに生じた感染症は、通常の蜂窩織炎ではなく、極めて急激な経過をたどる壊死性筋膜炎(フルニエ症候群)と呼ばれる特殊な感染症であり、ゆきが平成六年七月中既に直腸瘻孔に起因する感染症に罹患していたとしても、あまり進行しておらず、八月三、四日ころから急速に進行したと考えられる。
被告病院の医師らは、六月一二日の退院後、同月二七日、同月二八日及び七月二五日の各診察時において、ゆきに対し直腸瘻孔に起因する感染症も念頭において治療をしてはいたが、以下のとおり、右各診察時においては、ゆきに対し厳重な経過観察を行うべき状況になかった。
(二) まず、ゆきは、平成六年六月一二日、被告病院内科を退院したが、特に症状も発熱もなく、CRP値も一前後であったから、慢性の炎症が存在していた可能性はあるものの、直腸瘻孔に起因する感染症には罹患しておらず、被告病院の医師らが、同日の時点で、経過観察を行うこととした点に過失はない。
(三) また、六月二七日の内科外来診察並びに同月二八日の外科外来で施行した簡易直腸鏡及び直腸診等では特に異常所見はなく、症状の変化もなかった。したがって、次の診察時期を一か月後の七月二五日としたことは適切な指示であった。
(四) さらに、七月二五日の内科外来診察においても、診察所見上特に感染症の罹患を疑わせる所見や急性症状は見られず、ゆきは、自宅近くの医師に坐骨神経痛といわれたが注射を受けてよくなったとしか述べなかったから、小沢医師が経過観察を指示したことは適切であり、感染症の兆候を見落とした過失はない。
なお、同日の血液検査においてCRP値は七・二であったから、仮にその結果が当日判明していればその後の対応が異なっていた可能性があるが、その場合でも一、二週間後にCRPの再検査を予定して、症状の変化があれば早期に受診するよう指示する程度にとどまり、経過観察をすることには変わりがないから、この点においても被告病院の医師らに過失はない。
3 説明義務違反
(原告らの主張)
(一) 被告病院の医師らは、直腸瘻孔が発見された後は、ゆきに対し、直腸瘻孔があること、周辺組織に感染症が起こる危険性が大きいこと、感染症が起きた場合には臀部等の疼痛や発熱が生ずることなどを十分に説明し、繰り返し注意を促す義務があった。
(二) しかし、被告病院の医師らは、右説明を行わなかった。そのためゆきは、臀部の痛みに引き続いて左大腿部に疼痛が生じた際、直ちに被告病院で受診することをせず、自宅近くの医師の診察を受けるにとどまった。その結果、本件感染症の発見が遅れ、これが悪化したためにゆきは死亡した。
(被告の主張)
(一) ゆきについては、入院中の平成六年六月一〇日に実施した大腸鏡検査の結果、初めて直腸瘻孔が確認されたが、被告病院の小沢医師は、ゆきに対して、右検査の結果を伝えた。また、小沢医師は、同月一二日の退院の際、ゆきに対し、直腸瘻孔とただれが存在すること及び発熱、血便、痛みなど症状に変化があった場合には再入院の可能性もあるため、すぐに主治医に連絡するように説明した。
(二) したがって、被告病院の医師としては、ゆきに対し、当時の医療水準において必要十分かつ実質的な説明を行っており、説明が不十分であったということはない。
4 損害
(原告らの主張)
(一) 逸失利益 四八八六万三〇〇〇円
ゆきは、平成六年八月当時、株式会社小川建材及び竜ヶ崎生コン株式会社の取締役を務め、年間九〇四万〇〇七八円の報酬を得ており、本件の敗血症による死亡がなければ、少なくともなお一〇年間は稼働し、毎年右金額を下回らない所得があったものと考えられる。そこで、右金額を基にライプニッツ式計算法により中間利息を控除して、ゆきの死亡時における逸失利益の現価を算出すると、次のとおり、四八八六万三〇〇〇円となる。
九〇四万〇〇七八円×七・七二一七(ライプニッツ係数)×〇・七(本人の生活費控除)≒四八八六万三〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て)
(二) 慰謝料 三〇〇〇万円
(三) 原告らは、ゆきの右(一)及び(二)についての損害賠償請求権を、法定相続分(原告隆が二分の一、原告良則及び原告行男がそれぞれ四分の一)の割合で相続した。
(四) 弁護士費用 九〇〇万円
被告は、任意の賠償に応じないので、原告らは弁護士を依頼して訴えを提起せざるを得ず、原告隆は、弁護士費用として右金員を支出した。
(五) 葬儀代 三六二万円
原告隆は、ゆきの葬儀代として右金員を支出した。
(被告の主張)
(一) 逸失利益については、ゆきになお一〇年間原告ら主張の所得があったとの事実は否認し、その余は知らない。
(二) 慰謝料の金額については否認する。
(三) 弁護士費用及び葬儀代については、本件事故による損害にはならない。
第三争点に対する判断
一 本件の経緯
甲一号証、九号証、乙一号証ないし六号証、一一号証ないし一三号証、証人小沢、同寺本及び同荒田の各証言、鑑定の結果並びに前提事実によれば、次の事実が認められる。
1 ゆき(以下、ゆきについての記述には主語を省略することがある。)は、昭和四二年、被告病院婦人科(以下、特に記載がなければ被告病院の診療科を指す。)を受診して子宮癌のため子宮の全摘出手術を受け、その際放射線による治療を受けた。その後昭和四四年ころ、泌尿器科で尿路感染の治療のため右腎臓摘出手術を受け、以後自己導尿を行うようになった。
昭和五八年二月に内科を受診して糖尿病と診断され、同年三月九日から同月三〇日の間、内科に入院し、退院後も昭和五九年二月まで内科で通院治療を受けた。
2 ゆきは、平成二年に眼科で老人性白内障の手術を受けたが、その術前検査で血糖コントロール不良を指摘され、内科で中等症の糖尿病と診断されたため、血糖コントロール改善目的で再び内科に通院するようになった。
3 ゆきは、平成六年三月末ころ、旅行先で膀胱炎の症状が出たことから、四月一一日、内科で小沢医師の診察を受けた。小沢医師は、検尿、尿培養を施行した上、尿路感染の兆候と診断して抗生物質を投与し、一週間ごとに診察して経過観察することとし、五月初めまで、抗生物質による尿路感染症の治療をした。
四月二五日の内科外来受診の際、小沢医師に対し、排便後に肛門痛があると訴えたため、外科の診察も受けることとなったが、直腸診上、痔などの粗大病変は発見されず、経過観察となった。
ゆきの膀胱炎は、五月二日までには軽快したが、高血糖値が続き、易疲労感も続いたため、小沢医師は、ゆきに対し、原因を精査するため入院を勧め、同月一八日からゆきは入院した。入院時の検査では、CRP値(炎症や組織破壊がある場合に血中に出現するC-リアクティブ・プロテインの数値)一・五七、白血球数六八〇〇個/マイクロリットル、便の潜血反応検査陽性であり、翌一九日の検査では、CRP値二・二一、白血球数七五〇〇であった。
4 ゆきは、五月二三日、寒さのせいか臀部の辺りが痛むような違和感があると訴えたため、看護婦は、カトレップ(湿布)を貼用して様子を見たところ、ゆきは、翌日には軽快したと話した。同月二三日の検査では、CRP値三・四一、白血球数六三〇〇であり、同月二五日の検査では、CRP値二・四四、白血球数五九〇〇、便の潜血反応検査陽性であった。
5 便の潜血反応検査で陽性が持続したため、ゆきは、五月二七日、下部消化管(大腸)の注腸検査を受けた。この検査では、直腸からS状結腸にかけて放射線腸炎を疑わせる像が、S状結腸壁には放射線腸炎によると考えられる狭窄像が、また直腸には瘻孔が、横行結腸と上行結腸には、大腸ポリープを疑わせる所見がそれぞれ発見された。便の潜血反応の原因は、これらの結果だけでは確定できなかったため、小沢医師は、消化器内科の医師と相談の上、ゆきに大腸鏡検査を行うこととした。
同日の検査では、CRP値一・七九、白血球数は六六〇〇、同月三〇日の検査では、CRP値〇・九八、白血球数六三〇〇、六月一日の検査では、CRP値〇・七八、白血球数六二〇〇、同月六日の検査では、〇・八九、白血球数六二〇〇、同月八日の検査では、CRP値〇・八五、白血球数五八〇〇であった。
6 ゆきは、六月一〇日、大腸鏡検査を受けた。この検査では、S状結腸の狭窄ははっきりせず、直腸部には下部の内壁に白苔を伴う不整陥凹が見られ、この部位に直腸瘻孔が認められた。小沢医師は、便潜血反応の原因は、直腸瘻孔付近に広がる潰瘍からの出血であり、肛門部の違和感も直腸部の潰瘍に由来すると判断した。また、大腸鏡検査の際、S状結腸部から二か所、直腸部から三か所それぞれ試料を採取して生検を行ったが、炎症所見のみで、悪性腫瘍の可能性は一応否定された。
小沢医師は、ゆきの同月一一日の血液検査では、CRP値一・五四、白血球数五八〇〇であり、まずまずの数値であったため、直ちに外科的措置をする必要性はないと判断し、退院二週間後に外科外来で直腸専門の医師の診察を受けた上、直腸瘻孔に関しては今後同医師の経過観察を受ける必要があり、糖尿病については、血糖値コントロールを継続の上、月一度の内科外来による経過観察が必要であると判断した。
小沢医師は、ゆきに対し、退院に当たって、直腸に瘻孔とただれがあることと、発熱の持続、肉眼的な血便の持続、痛みが出現した場合や外科医の判断によっては再入院の上外科的措置が必要になることを説明し、肛門の痛みが強くなったり、発熱したりした等の変わった症状があったらすぐに主治医に伝えること、便秘をすると潰瘍がこすれるので便秘をしないようにすること、直腸潰瘍の経過観察を外科で受けることを指示した。
ゆきは、六月一二日、内科を退院した。
7 ゆきは、六月二七日、内科外来において小沢医師による糖尿病の診察を受け、血液検査の結果は、血糖値(GLU)一四三mg/デシリットルと標準値よりやや高く、フルクトサミン(FRA。おおむね過去二週間の血糖値の水準を示す指標)は、三〇八μmol/リットルと、やはり正常値の上限三〇〇を若干上回るものであったが、糖尿病患者の値としては血糖値コントロールが比較的良好に行われているといえる範囲であった。
ゆきは、小沢医師に対し、入院中に訴えていた肛門部の違和感については特に症状を訴えず、痛みもないが多少便秘気味と告げたため、下剤の処方を受けた。小沢医師は、この段階では感染症を疑っていなかったが、ゆきには直腸潰瘍があり、自己導尿もしているので、今後感染症を起こす可能性があると考え、次回から血液検査項目にCRPを入れることとし、ゆきに対し、四週間後に同医師の診察を受けるよう指示するとともに、翌二八日に一般外科外来の寺本医師の診察を受けるよう指示した。
8 ゆきは、六月二八日、一般外科外来で寺本医師の診察を受けた。寺本医師は、ゆきに対し、肛門周囲の観察及び直腸内の指診により特に異常がないことを確認の上、直腸鏡検査を施行し、これにより、直腸下部の肛門から一〇センチメートル辺りまでを検査したが、五ないし八センチメートルの直腸前壁に巨大潰瘍を認めただけで、瘻孔形成をはっきりと確認できなかったため、直腸潰瘍と診断した。そして、ゆきが、右の指診の際などにも特段の痛みを訴えておらず、直腸瘻孔が発見された内科入院時から約一か月間何の症状もなく経過していたこと、定期的に内科に通院していることなどから、寺本医師は、次の外科診療日を定めず、ゆきに痛みや発熱などがあれば来院するよう指示した。
9 ゆきは、七月四日、左大腿部が痛んだことから、自宅近くのいしかわクリニックに通院し、石川貴久医師の診察を受けた。石川医師は経過観察とし、ゆきは、同月二一、二二、二三、二六、二八及び二九日並びに八月一日、同医院に通院した。
10 ゆきは、七月二五日、小沢医師の内科外来で診察を受けた。この時の血液検査では、血糖値は八五であり、血糖コントロールは非常に良好で、フルクトサミンの値も三〇六であった。過去二か月間の血糖値の指標であるヘモグロビンA1Cの値も七・三パーセントと良好であった。白血球数は六九〇〇で、白血球分画も正常であった。なお、この日の採血によるCRP値は七・二〇と高かったが、右数値は当日の診察の際には判明していなかった。
ゆきは、この診察の際、自宅近くの医師に坐骨神経痛といわれたが、注射でよくなったと告げ、丸椅子に座っている間も痛み等は訴えなかった。小沢医師は、ゆきに対し、六月二八日の寺本医師による診察結果報告書を読み聞かせ、直腸に潰瘍があったが入院中にあった瘻孔ははっきりしなかったこと、同医師は瘻孔と肛門部違和感とは関係ないのではないかと判断していることを知らせ、四週間後に次回の診察予約を入れた。
11 ゆきは、八月五日、左下肢に疼痛が起きたため、近所の秋本脳神経外科を受診し、疼痛部に鎮痛剤の注射を受けた。しかし、同部位の疼痛と腫脹が次第に増悪し、足先の方向に拡大していった。
12 ゆきは、八月六日、左下肢疼痛を主訴として内科を時間外で受診し、柴田医師が診察に当たった。柴田医師は、緊急の血液検査の結果等を踏まえ、腎機能低下(急性腎不全)の状態にあると判断し、左大腿部の腫脹と圧痛も認めたため、ゆきを緊急入院させることとした。
荒田尚子医師(当時の姓「神田」。以下「荒田医師」という。)が担当医師となり、内科研修医の小西医師とともに午後三時前に処置室に到着して柴田医師から引継ぎを受け、診察をした。両下肢のレントゲン写真を撮影した後、内科の病室へストレッチャーで搬送し、午後三時一五分に受け入れ、搬送後は荒田医師と丸山博医師が主治医として診察を行った。
診察の結果、ゆきの意識は清明で発熱はなく、白血球数も四四〇〇と正常であったが、血糖値は三九一と高く、血清クレアチニンと尿素窒素の値もそれぞれ二・五mg/デシリットル、四〇・四mg/デシリットルと増加していて腎機能の低下が認められ、CRP値も三九・四〇と異常高値となっており、脈拍が一一二回/分と多かったのに対し、血圧は九九/五四mmHgと低めであった。左下肢は、左鼠径部左大腿部、左下腿に及ぶ腫脹と圧痛が著明であり、左下肢のレントゲン写真で左大腿部から下腿にかけて広範な皮下ガス像が確認された。
荒田医師は、右診察の結果を総合して、ゆきは非常に重症の蜂窩織炎に罹患してショック前状態にあり、CRP値の上昇は、蜂窩織炎、尿路感染症、敗血症によるものと、腎機能の悪化は、敗血症、高血糖による脱水及び鎮痛剤の使用によるものと判断した。尿素窒素の上昇は脱水以外に消化管出血による可能性も否定できないので、直腸診を行ったところ、直腸、肛門の部位から肉眼的に確認できるような出血はなく、痛みの訴えもなかった。
荒田医師は、起炎菌の同定を待たずに、直ちに広域抗生剤の全身投与を開始したが、午後四時ころ、外科当直医と相談の上、全身状態が非常に不良なため積極的外科的措置をすることができないとして、抗生剤を投与して様子を見ることとした。
ゆきは、午後四時三〇分ころ、アシドーシスに起因すると思われる呼吸困難の傾向を示したため、荒田医師は、メイロンを投与して血液の酸性度を中和した。ゆきは、六時半ころまでに、嘔吐を始めた。
午後八時ころには、敗血症が更に悪化して、腎不全に加え、播種性血管内凝固症候群(DIC)をも呈するようになった。荒田医師は、血栓形成阻止目的でFOYという薬剤を投与した。
午後九時ころ意識レベルが低下し、傾眠傾向となり、脈拍は一四一と頻脈が更に亢進した。
荒田医師は、翌七日午前〇時四〇分ころ、ゆきの血圧が低下したため昇圧剤を増量した。
午前五時ころ、意識レベルが更に低下し、昏睡状態となり、午前七時四五分ころ、四肢の冷感が急速に亢進し、クスマル呼吸(重症の糖尿病や尿毒症の際に見られる特有の呼吸)を呈し、血圧も収縮期(最大)血圧が七〇ないし八〇、拡張期(最小)血圧は測定不能という状態になった。
午前一〇時二〇分、最初の心停止、呼吸停止を起こした。
荒田医師は、その後ゆきが三回心停止を起こしたため、人工呼吸器を装着するか否か家族に問い合わせたところ、ゆきの子供が希望したので、午後二時一五分に人工呼吸器を装着した。
ゆきは、午後二時五〇分、四回目の心停止を起こし、薬剤投与と心臓マッサージが施されたが回復しなかった。荒田医師は、午後三時一一分、ゆきの死亡を確認し、人工呼吸器を取り外した。
13 ゆきは、家族の了解の上病理解剖に付され、直腸瘻孔に起因するとみられる小骨盤腔化膿性死腔炎、腎内多発性小膿瘍、左下肢蜂窩織炎等化膿性炎症によって引き起こされた敗血症及びDICによって死亡したと診断された。
二 人工肛門造設術等の外科的措置をすべき注意義務違反(争点1)について
1 放射線直腸炎
前記一で認定した事実に鑑定の結果を総合するとゆきに生じた直腸瘻孔は、晩期の放射線直腸炎に伴うものであったことが認められるところ、甲五号証、六号証、乙一一号証、証人寺本の証言及び鑑定の結果によれば、次の事実が認められる。
放射線直腸炎とは、直腸周囲の悪性腫瘍に対して行われる放射線治療の際に直腸にも放射線が照射されることにより発生する直腸炎のことであり、放射線照射開始後二ないし四週間で現れる急性期のものと照射後三か月から一〇数年後に生じる晩期のものがある。急性期のものは保存的療法によって軽快治癒することが多いが、晩期のものは自然治癒の可能性が極めて低い。したがって、晩期の放射線直腸炎に対する治療としては、外科的療法が必要となるが、放射線直腸炎に伴う直腸瘻孔を縫合により閉鎖することは、創傷治癒機転が不良なため無意味である。そして、採り得る外科的療法としては、腹会陰式直腸切断術などにより病変直腸の切除をした上、永久的な人工肛門を造設する根治的手術と、一時的人工肛門を造設して病変直腸部を空置し、病変部の改善を待つ方法とがあるが、実際の選択としては、病変直腸の切除が不可能なことも多く、また、切除可能であっても侵襲が大きいため、一時的人工肛門造設術となる場合が多い。しかし、一時的人工肛門造設術では、症状の軽減に有効な場合もあるが、多くの場合、病変の改善は望めない。また、一時的人工肛門は、永久的人工肛門以上に生活上の負担が大きい。このため、外科的療法を施すか否かは、症状の大小、全身状態などを総合して判断することが重要である。
2 ゆきの直腸瘻孔に対する治療法
(一) 前記一で認定した事実及び鑑定の結果によれば、次の事実が認められる。
(1) ゆきの直腸瘻孔は、前記のとおり晩期の放射線直腸炎に伴うものであったが、平成六年五月二七日及び六月一〇日の時点においては、直腸炎の周囲への波及はなく、限局しており、症状としては軽度の肛門部違和感をときどき感じるにすぎないものであり、ゆきの糖尿病は進行してはいたが全身状態は比較的良好であった。したがって、ゆきに対し、大きな生活上の負担を残すのに比し、一時的な軽快しか望めない一時的人工肛門造設をこの時点で行う利点はなかった。
(2) 他方、腹会陰式直腸切断術などの根治的手術は、骨盤内に大きな死腔を生じさせ、術後出血や会陰創、腹壁創の感染、人工肛門造設に伴う合併症などがある上、しばしば排尿障害等を伴うなど患者の受ける肉体的、精神的負担が大きい。また、糖尿病を併発している場合には、更に合併症の頻度は高く、放射線直腸炎の骨盤に対して施行するときには、その侵襲は極めて高くなる。また、右手術後においても壊死性筋膜炎が発症した事例もあり、壊死性筋膜炎の予防として右手術を行う意味はない。したがって、生命に差し迫った危険のあるとき又は日常生活が困難となる症状があるときが、右手術の適応であり、平成六年五月二七日及び六月一〇日の時点におけるゆきの症状に照らせば、ゆきが右手術の適応であったとはいえず、この時点では、経過観察を行い、病状の進行に応じて手術の適応を考慮するのが妥当であった。
(二) そして、前記一で認定したとおり、ゆきが死亡する前の最後の診察日である七月二五日の時点まで、ゆきに生命に危険を生じる事態や日常生活に支障を来したような状況は発生していないから、右時点においてもゆきに一時的人工肛門造設術や腹会陰式直腸切断術等の手術適応があったとは認められない。
3 まとめ
したがって、ゆきの放射性直腸炎に基づく直腸瘻孔に対する措置としては、月一回程度の経過観察が望ましく、人工肛門造設術等の外科的措置をすべき必要性はなかった。
三 壊死性筋膜炎の診断過誤(争点2)について
1 壊死性筋膜炎
甲二号証ないし四号証、甲七号証、乙一一号証及び鑑定の結果によれば、次の事実が認められる。
(一) 壊死性筋膜炎とは、筋膜や筋肉等の軟部組織の壊死性感染症であり、好気性菌や嫌気性菌を含む混合感染で発症し、筋膜に沿って急激に広がり皮下組織から筋肉までに至る激烈な組織壊死をもたらすもので、症状が激烈であることでよく知られているが、比較的まれな感染症である。壊死性筋膜炎のうちガス産生菌によるものはガス壊疽と理解され、また、肛門部の膿瘍や痔瘻から皮下結合組織沿いに会陰部、陰嚢、更に腹壁までに広がったものをフルニエ症候群という。
(二) 壊死性筋膜炎は、通常の病状とは異なる症状が生じて一日から数日の経過で壊死性筋膜炎として極めて急激に発症し、糖尿病、癌、血行障害、肝疾患等を基礎疾患とすることが多いが、小外傷や誘因なく発症することも多く、進行は急速であり、臨床症状も病状が完成するまで典型的でないため、その早期診断、早期治療は極めて困難である。基礎疾患を持つ患者の場合、軟部組織の感染症については、局所の疼痛、腫脹、高熱に対して注意し、通常の病状と異なって広がっていくときには、壊死性筋膜炎を念頭に置くことが必要である。そして診断が確定次第、集中的な全身管理と、局所の切開と壊死性組織の切除を十分に行うなどの治療に全力を注ぐことが救命につながるが、診断の確定時には既に壊死性筋膜炎は十分進行してしまっていることが多い。
2 ゆきの死因
乙五号証、六号証、一三号証及び鑑定の結果によれば、ゆきの直接死因である敗血症及びDICを引き起こした左下肢蜂窩織炎等の炎症巣は、平成六年八月五日ころから急激に増悪したガス産生菌による軟部組織のガス壊疽であり、壊死性筋膜炎に当たること、右の左下肢の蜂窩織炎は、前記直腸瘻孔に起因する小骨盤腔死腔炎からの直接的波及、又は右死腔炎からの感染に基づく腎膿瘍からの血行性波及により生じたものであることが認められる。そこで、被告病院の医師らが、ゆきの右感染症の進行増悪を予測できたか否かにつき判断する。
3 ゆきの感染症罹患の状況
前記一で認定の事実に乙二号証及び鑑定の結果を総合すると、被告病院の医師による各診断時における感染症罹患の状況については、次のとおり判断できる。
(一) 平成六年五月二七日
ゆきに対し、同日、注腸造影が施行され、直腸下部に瘻孔が発見されたが、同月二三日にゆきが訴えた肛門部の違和感は翌日には軽快していたこと、自覚症状や発熱もなかったこと、検査所見では、白血球数増加や左方移動もなく、CRP値は、一・七九とやや高かったが、低下傾向にあり、尿路感染症による可能性が最も高かったことなどから、五月二七日の時点では、少なくとも臨床上問題となるような直腸瘻孔による感染症に罹患していたとは認められない。
(二) 六月一〇日
ゆきに対し、同日、大腸鏡が施行され、不整陥凹と瘻孔が認められたが、このころには特に症状も発熱もなかったこと、検査所見では白血球数増加や左方移動もなく、五月三〇日から六月一〇日にかけてのCRP値は一を下回っていたことから、同日の時点では、直腸瘻孔による感染症に罹患していたとは認められない。
(三) 六月二七日ないし二八日
ゆきは、同月二七日、内科を受診しているが、特に症伏の変化はなく、肛門違和感が持続しているのみであり、血糖はゆきの通常値と変わらなかったことから、同日の時点においては、感染症に罹患していたとは認められない。
また、ゆきは、翌二八日、外科を受診し、直腸鏡を施行されて直腸潰瘍が認められたが、圧痛等はなかったから、同日の時点において、新潰瘍部付近が感染症に罹患していたとは認められない。
(四) 七月二五日
同日における血液検査では、白血球数は六九〇〇で、その分画もほぼ正常であり、血糖値も正常範囲内であったが、CRP値が七・二と上昇していたことなどから、比較的軽い感染症に罹患していたと認められ、膀胱炎ないし直腸瘻孔に伴う感染症の可能性が高い。
4 感染症診断の可能性
右3(四)のとおり、ゆきは、平成六年七月二五日の時点で、軽度の感染症に罹患していたと認められるが、鑑定の結果によれば、ゆきが自宅の近所の医師に坐骨神経痛と診断されていたことから考えると、直腸瘻孔又は他の原因による軟部組織の炎症による疼痛が生じていた可能性はあるが、右の痛みは軽度であったこと、肛門部の症状や発熱などの臨床症状もなかったこと、さらに、診察時にはゆきの血液検査によるCRP及び白血球数が判明していなかったことから、同日において、右感染症の存在を診断し、その進行増悪を予測することはできなかったことが認められる。
なお、この点に関し、原告らは、同日の血液検査について、小沢医師がゆきのCRP値を当日中に参照し得るよう配慮すべきであったと主張する。
しかし、前記一で認定した事実に乙二号証及び鑑定の結果を総合すれば、ゆきの六月一一日におけるCRP値は一・五四と基準範囲の〇・一五以下を上回り、数日前に比べて更に上昇しているが、この程度の数値はごく軽症の炎症を示すものに過ぎず、慢性の尿路感染、直腸瘻孔の存在を考えても、その値も変化も特に問題にならない程度のものであるため、右時点においては、その後症状の変化がなければ、直腸瘻孔については月一回の診察で十分であったこと、そして、通常の感染症は症状を伴い、さらに糖尿病の患者は、感染症に罹患すると血糖値が高くなることが多いことから、直腸瘻孔の存在を考えても、症状の診断及び血糖値の測定を行って変化がなければ毎月CRP値を測定するまでの必要は高くないことが認められ、乙一一号証によれば、小沢医師は、六月二七日の診察時に、ゆきが直腸潰瘍を持ち、自己導尿をしていたことから、一般的に感染症を引き起こす可能性があることを考慮して、通常の糖尿病の検査項目にはないCRPを七月二五日の検査項目に加えたにすぎないことが認められる。
したがって、小沢医師が七月二五日の診察時に、ゆきの同日の検査によるCRP値を当日中に参照し得るように配慮すべきであったとはいえない。
5 まとめ
以上のとおり、被告病院の医師らに、ゆきの感染症について診断の過誤や診察時期についての判断の誤りがあったということはできない。
四 ゆきに対する説明義務違反(争点3)について
前記一で認定した事実によれば、小沢医師が、被告病院内科からの退院時に、ゆきに対し、直腸の瘻孔及びただれがあること、発熱の持続、肉眼的な血便の持続、痛みが出現した場合や外科医の判断によっては再入院の上外科的措置が必要になることを説明し、肛門の痛みが強くなったり、発熱した等の変わった症状があったらすぐに主治医に伝えることを指示したことが認められる。
したがって、被告病院の医師らは説明義務を尽くしており、説明義務違反は認められない。
第四結論
以上の次第で、原告らの請求はその余の点を判断するまでもなく理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鈴木健太 裁判官 駒田秀和 裁判官 廣田泰士は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 鈴木健太)